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……まただ。
また、わたしはあの夢を見てるんだ。
黒色の長い髪を前にたらしながら女の人に追いかけられる夢。彼女はわたしの事を探している。
最初はすぐに逃げられた。
だって、その女は俯きながら走っていたから追いかけてくる速度もそこまで速くはなかった。
でも──。
夢を見る度に女はほんの……ほんの少しずつだけど俯いていた顔をあげているような気がする。追いかけてくる速度も速くなってきているような気がする。
捕まったらどうなるのだろう?
考えたくない。考えただけでも恐ろしい。
だから、わたしは捕まらないように全力疾走でどこまでも続く闇の中を走る。
……苦しい、苦しいよ!
ハァハァっと、息があがる。でも立ち止まれない。
ダメだっ!
後ろを振り返る。見るとあの女がまだ追いかけてくる。走っても走っても追いかけてくる。
何でよっ! いつもだったら、諦めてくれるか逃げきれるのに!
……お願い!早く夢から覚めてっ!このままじゃ捕まっちゃうよ!
後ろからあの女の息づかいが聞こえてきた。
もうダメっ、誰か助けてっっ!!
悲鳴をあげて助けを求めた。
「ハァッ……ハァッ……」
目が開いた。苦しい。これは夢なの?現実なの?
私は生きてるの? 死んでるの?
とにかくパニックだった。わたしは恐怖のあまり目から涙が溢れてきた。
あ……温かい。
皮肉にも涙の生温い温度でわたしは生きていることを実感した。
悪夢を見るようになってから1ヶ月近くが経とうとしていた。毎日のように見る悪夢にわたしの心はすでに限界に近かった。
……きっと肝試しをしたからだ。
わたしはあの日、肝試しをしたことをとても後悔した。そして、隣の部屋で寝ている両親を起こさないよう声を押し殺して泣いた。
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