救世主

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「相田さんの少し前くらいに俺も友達と肝試しをしに廃マンションを訪れたんだ。肝試しでは何も起こらなかったけど、その晩以降から女の人に追いかけられる悪夢を毎日見た。」 恭也君はその時のことを思い出したのか苦い顔をして話してくれた。 「それから今は……今はどうなったの?まだ悪夢を見ているの?」 わたしの質問に恭也君は首を横に振って穏やかに答えた。 「今は見ていない。悪夢を見なくなるようにするにはあることを解決しなければならないんだ」 「……あることって?」 恭也君が口を開いて説明してくれようとした時、携帯電話がなった。 「話の途中にごめん! ちょっと電話にでるね」 「ううん、気にしないで」 恭也君はそう言って電話にでた。 話や口調からして友達からの電話のようだった。数分して電話を終えると恭也君が謝ってきた。 「相田さん、ごめん! 急用が入って今から行かないといけなくなった」 「えっ! でもまだ解決方法を……」 解決方法を教えてもらっていない。 解決方法が分からなければまた今日も悪夢を見てしまう。それがどんなに怖いのか同じ悪夢を見ていた恭也君なら分かるはずだ。 それに救世主ともいえる恭也君がいなくなるのが心細い。
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