1、シトラスの君

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「ねねちゃん、起きなさい!もう8時!!」 いつも聞く、母親の声。 目を開けると、部屋のもわっとした空気を感じた。 (ねねちゃんか。今日は母さん機嫌が良いみたい。。。) そんなことを考えながら携帯を見たら、時刻は8時10分。 ーーーそろそろ起きなきゃ。 ベッドの上で大きく伸びをしたあと、歯を磨くため洗面所に向かった。 もうすぐ60歳になる母親は、歳のせいか機嫌が悪い日良い日の差が激しい。 わたしを、ねねちゃんと呼ぶ日は機嫌が良い。 テレビのニュースではここ最近同じ事を言っている気がする。 『週のはじまりです。今日も本当に暑いですね、熱中症にお気をつけ下さい!』 歯磨きしながら部屋の窓を空ける。蝉の大合唱。 化粧をし、服を着替え、急いで朝ご飯を食べて会社へ向かう。 「ねねちゃん!日傘持った?」 「持ったよ、行ってきます」 ああ、日差し強い。そういえば最近梅雨明けしたんだっけ。 日焼け止めもっとキツく塗っておけば良かった。 そう思ったけど、時間がない。いつもより少し早く起きておけば‥‥ ニュースと同じで、毎日同じ事を思っている。 変わらない毎日、自分だけが止まっているように感じている。 変化を感じるのは、毎日顔を合わす両親の老いを感じるとき。 27歳、人生もう甘えてはいられない。 これも毎日思っている。
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