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(なにやってんだ・・・・わたし)
ーーーーーーあれからあの匂いに惹かれて、例の男子高校生のあとを着いてきてしまった。
(ストーカーじゃん!やばいな本当・・・・・・)
ため息を吐いたあと彼をに目を向けると、会社の近くにあった高校のテニスコートに入って行くのが見えた。
テニスコートは夜だが、彼が入ったすぐに電気がつき明るくなった。
コートの外に、しゃがんで、網の隙間からちらっと彼が見える。
制服から、おそらくテニス部のウェアに着替えていた。
すらっとした手足に、ウェアは良く似合っている。
(最近の高校生は大人びてるな・・・ってこんなこと考えてるってオバさんだわ)
寧々子は、急に我に返り返ろうと立ち上がったとき、コート場からパンッーーー!と音が響いた。
急いでコートを見ると、どうやら彼がサーブの練習をしているようだった。
続けて、何度も彼はサーブを打っていく。
(はじめてテニスしてる所見た・・・すごい、あんなに球にスピードも威力も・・・・・)
見入ってしまい、それからしばらく彼の練習する姿を見ていた。
そのとき、携帯の着信音がコートに響く。
「えっ、誰?」
彼が寧々子に気付き、こちらを見ている。
寧々子は驚いて、携帯を握りしめた。
彼は近くに置いてあったタオルを拾い、寧々子の側まで歩いてきた。
「あの・・・どちら様ですか」
近くで見る彼は、すれ違った一瞬では分からないところが見える。
目は奥二重、たれ目。鼻筋は通っていて、唇は薄い。
そして何よりーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの、シトラスの香り。
寧々子は熱くなった顔がバレないように、彼の目を見ながら話した。
「すみません・・・ふらっと歩いていたら、テニスの音が聞こえて。こんな所にコートがあるなんてなあって。」
とっさに出た言葉にしては上手に言えたと寧々子は思った。
そんな寧々子の言葉を聞いて彼は嫌な顔ひとつせず返事した。
「そうだったんですね。このコートは、すぐ側にある高校テニス部のなんです」
そう言ってニコッと笑いかけてくれた。
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