エピローグ

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そして春一は、 「俺はそのタバコの件の刑事資料と、キミが見つけだしてくれた美里が書いた融資書類を、本店の取締役、狭間幸秀に渡しに行った。そして取引したんだ」 「え?」 よくわからない展開に、鈴音は首をかしげる。 「どういう意味?」 春一は、大学の同期だった美里の横領の汚名をそそぐために、事件の調査をしていたはずだ。 だったら銀行とは部外者でジャーナリストの春一なら、自社の雑誌にセンセーショナルに発表してしまった方が、社会的問題提議にもなるだろう。 美里の無念も晴らせるというものだ。 なのに、そこで出てくるのが、鈴音でも名前もうろ覚えの銀行の上層部、本社の取締役『狭間幸秀』の名前。 その理由がわからない。 また、せっかく集めた資料を、春一が、人任せにしてしまえる意味がわからない。 春一は、一体誰と、何を、取引したというのか。
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