プロローグ

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プロローグ

赤い炎の舌が天を嘗めるようにのぼっていた。 周囲にはやじ馬が押し寄せ、それぞれに腕をあげて、炎に包まれる建物に向け携帯のシャッターをきっている。 てんで勝手にしゃべるざわめきは、鈴音には耳に痛いノイズのようにしか聞こえない。 安全な場所に下がっているはずなのに、炎に炙られた顔が熱い。 だけど、パジャマに素足に靴の姿の鈴音は、恐ろしさで心が凍えていた。 二年間暮らしたマンションが目の前で燃えている。
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