798人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
赤い炎の舌が天を嘗めるようにのぼっていた。
周囲にはやじ馬が押し寄せ、それぞれに腕をあげて、炎に包まれる建物に向け携帯のシャッターをきっている。
てんで勝手にしゃべるざわめきは、鈴音には耳に痛いノイズのようにしか聞こえない。
安全な場所に下がっているはずなのに、炎に炙られた顔が熱い。
だけど、パジャマに素足に靴の姿の鈴音は、恐ろしさで心が凍えていた。
二年間暮らしたマンションが目の前で燃えている。
最初のコメントを投稿しよう!