エピローグ

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「弟たちとキミの身の安全。それをすべての資料を渡す交換条件として、狭間に持ちかけた」 春一が予想した通り、その条件を狭間は飲んだ。 そして即座に広瀬を切り捨て、春一が3年前の事件の真実を記事にすることを認めた。 ゴシップ誌を選んで掲載したのは、その事実を刑事事件には発展させず、あくまで噂レベルにとどめ、広瀬を解雇ではなく、出向という形で銀行から追いやるためだ。 広瀬は、海外の子会社に出すと、狭間が約束した。 鈴音や春一の弟たちに手を出すことは、もう無理だろう。 それで、3年前の美里の事件も、一応の形を見たことになる。 美里が横領などしていないことは、世間に明らかにされた。 とかげの尻尾きりのような解決方だが、力のない春一には、この手段しか思い浮かばなかった。 だから、鈴音に二度と嘘はつかないが、言えないことは沢山ある。 狭間がすべての発端だったこと。 今回の解決にも、裏で手を引いたこと。 けして褒められる解決法では無いから、鈴音には言えない。 そして狭間を見逃すことで、美里を裏切ったという春一の事実。 これは、春一がこれから一生抱えていく、春一の罪だ。
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