透明人間

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ついさっきもなんだけど、僕は喉が渇いてしまったから近くの自販機にコーラか何かを買い行ったわけ。 今となってはこの部屋を出ることも珍しいくらいなんだけど、本当に喉がカラカラだったからね。 そうして僕は当たり前に百円玉を自販機に入れたんだけど、僕の入れた百円玉は返却口に戻ってきてしまうんだ。 必ずだよ。 もちろん僕だって一度で諦めたわけじゃないさ。 二度、三度と入れてはみたし、別の百円玉を試しもした。 僕は二百円持って出て来てたんだから。 けどそのどちらもが同じ結果さ。 透明人間になると自販機にまで気付かれなくなるなんて新しい発見だった。 それで僕がどうしたかと言うと、そのままうちに戻って来て、今、目の前には麦茶の入ったコップが置かれているってわけ。 けっこう笑える話だと思うんだけど、透明人間になってからの生活の弊害と言ったらこの程度だね。 コーラを諦めて麦茶を飲む羽目になるって程度のこと。
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