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いつものデート。
いつもの店でランチを食べてから
いつもの様に2人で店を出て
混雑したアーケードを歩き出す。
でもいつもとは違った。
『…もし、明日俺が死んだらどうする?』
びっくりした。
彼とは付き合って2年半…
非現実的思考は持ち合わせてはいない
悪い意味で冗談が通じない彼が
どれだけの人が冗談で言ってきただろう
それこそ史上最高の非現実的な質問を
突拍子もなく笑顔で聞いてきたのだ。
『そんなこと言うなんてあなたらしくないわね』
私がそう言うと彼は
ただただ笑顔で私の手を握り歩き出した。
今思えば、いつもとは違ったことで
いっぱいだった。
どんなコーヒーでもコーヒー牛乳にしてしまうくらいこれでもかと砂糖やミルクを入れないと飲めない彼が、私がいつも飲むブラックに挑戦したいと言い出したり。
ゲームセンターでは
UFOキャッチャーの前を通ると決まって
『こんなのは取れない様に出来てるんだよ、だからお金の無駄。』
…と言っていたのに、私が大好きなキャラクターのぬいぐるみを取れるまで頑張ったり。
私が好きなアーティストのCDや好きなアニメ
好きな俳優が出てるDVDを全部借りたり……。
そんな彼は次の日に死んでしまった。
自殺でもない他殺でもない病死ですらない
原因不明の死。
なんであの日あんな事言ったの?
なんであの日いつもと違ったの?
自分が死ぬことがわかっていたの?
考えたってわからない…
けどそんな私には今、
お腹の中に彼との赤ちゃんがいます。
急にいなくなったあなたが授けてくれた
私の大切な大切な宝物。
そして月日は流れ…
私の宝物はあなたそっくりの
青年になりました。
『そんなに僕、父さんにそっくりなの?じゃあ父さんがいない分、母さんに何かあったら絶対に僕が守るから。』
こんなに頼もしくなった息子なら
私がいなくなっても1人で大丈夫そうね。
あぁやっとわかったの
あなたの前にもあの日現れたのね
いわゆる【死神】という者が。
今私の前にも現れてこう言ってるわ…
お前はあいつの犠牲によって生かされた。
今度はお前の番だ。
自分が死ぬか【大切なもの】を殺すか
選べってね。
そんなの決まってる…
あなたが私を守ってくれた様に私も…
?
けれど私の頭にはある疑問符が浮かび上がる…
これって本当に守れるの?
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『なぁ、俺が明日死んだらどうする?』
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