第1章

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 恐らくの話だが、日本都会の夏と砂漠のどちらが暑いかと二択を迫られれば、大抵の人は砂漠と答えるだろう。しかし、それは違う。砂漠というものは基本的に多湿とは無縁の地であり、俗に言う「ジメジメとした暑さ」ではないため、気温だけでだらだらと汗をかくようなことはないのである。それゆえに、砂漠を何往復もしてきたツワモノが日本で熱中症にかかる、などはよく聞く話ではないだろうか。  しかし、直射日光はそれとはまた別である。砂漠とは、前述の通り、多湿とは無縁の地である。何故ならば、砂漠に点在する山々達が雑巾を絞るかの如く、ぶつかってきた湿気を帯びた風から雨を降らすのである。山を越え、降りる風は干からび、大気を乾燥させる。つまり、太陽を遮る雲が存在し得ないのだ。  そうすればどうなるのか、答えは簡単である。照りつける太陽によって、肌が熱される。それは、汗をかいたと自覚しない早さで汗が塩の粉へと化すほどであり、やはり甲乙が付け難いほど暑いのである。  真夏の快晴日。鳥取砂丘は灼熱地獄だった。  ジリジリと焼ける肌、人生経験の少ない僕が真っ先に連想したのは、暑い日に行うBBQだった。炭の熱気に耐えながら肉を転がす。そんな状態を常時体験させられているようだった。 「BBQみたいに近づいたり離れたり出来たら良かったのに……」  独り身で来た僕に、返ってくる言葉は無かった。
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