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井戸の中の未来
よくある話だよ。
井戸を覗くと、水面に自分の未来の姿が映るってヤツ。
だけどここの井戸は、タイミングやら何やらがあるらしく、昔から何度覗いたって今現在の自分しか映らない。
だから、言い伝えなんてアテにならないもんだと思ってた。
でもあの年…農作業で泥だらけになり、もういっそこの場でと、井戸端で上着を洗ったんだ。
その時に、ポケットに入れていた写真が落ち、風に吹かれて井戸の中へと舞って行った。
写真は、過疎化に悩む村を少しでも盛り上げようと、都会の人間に向けて、自然の豊かさをPRするために撮ったものの一枚で、たまたま俺が映ってるのがあったから、記念にどうぞともらったものだった。
そこまで大切じゃないけれど自分が映った写真だし、井戸の中に物が落ちているのは不衛生でよろしくない。
そう思い、すぐに釣瓶ですくい上げたんだが、拾った写真はおかしなことになっていた。
真っ白な空間に俺一人が存在している。…いや、正直、映っているのは俺なのかという感じだ。
作業姿を映された写真だから、当然、正面は向いてない。横顔どころかうつむき加減の、俺だと言われれば俺が映っている程度の写真だが、その映像の俺がおかしい。
なんだか一回り以上体が小さい。手もしわしわだし、何より、髪がほとんど白髪だ。
何もない空間に、年老いとしか思えない俺が映っている。
なんだこりゃ。水に浸かった程度で写真が瞬間劣化でもしたのか?
首を捻っても答えなど出る筈もなく、俺は上着の隣に写真を干した。
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