井戸の中の未来

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 引き出しから出てきた懐かしい写真。それを見ると、あの井戸は本当に、未来が見える井戸だったんだと実感する。  タイミングやら何やらはあったけれど、あの井戸は本当に本物だった。  写真から目を逸らし、鏡を見る。そこに映っているのは写真の人物そのものだ。  四十年前に撮られた写真に映っている、今の俺そのものの姿。  あれは本当の本当に、未来が映る井戸だったんだな。  その井戸だが、あの日から数年後に水が枯れ、廃井戸は危ないからと埋め立てられて消滅した。  あれがずっとあのまま水を湛えていて、こんな不思議な現象が起こり続けてくれていたら、村興しのいいアピールポイントになったろうにな。  残念ながら村興しは上手くいかず、村は廃村になって、今じゃ人っ子一人いない空き家と荒れ地の風景だ。  …写真の背景が白いのは、全部なくなるって暗示だったのかもしれないな。 井戸の中の未来…完
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