四百億年の愛

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 楓は恋人が眠る棺桶を引きずっていた。 「もうすぐ、もうすぐ着くからね。」  核戦争で荒廃した町の中を、どんな望みも叶うというヴァルハラシティーを目指し、楓は、ただひたすら歩いていた……  楓は息を切らしながら数日かけてヴァルハラシティーに辿り着いた。そしてズルズルと棺桶を引きずりながらヴァルハラシティーの中心にあるひとつのビルの中に入っていった。  そのまま楓はビルの中心部、クロノスシステムに向かった。クロノスシステムとは、時を司る、いわいるタイムマシンのようなものであった。 「私ハ、クロノスシステムノメインコンピューター、テスラ。貴女ノ願イヲ叶エテ差シアゲマショウ。」  楓は大きく深呼吸して言った。  「お願い!この人を生き返らせて!」  テスラは答えた。 「ソレハ出来マセン、一度死ンダ人間ノ時間軸ヲ変エルコトハ出来ナイノデス。」 「それじゃぁ、私たちの時間を戻して!」 「戻シテモイイデスガ、ソノ人ガ生キテイタ時間マデシカ一緒二イラレマセンヨ。」  楓はしばらく考え込んだ 「じゃぁ、時間を進めて……」 「時間ヲ進メルノデスカ?」 「私たちが生まれ変わって、再び巡り会えるまで時間を進めて!」  テスラは黙っていた。 「やっぱり、出来ないの?」  楓は力が抜け、その場に座り込んでしまった。 「ワカリマシタ。ヤッテミマショウ。」 「ありがとう!」
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