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しばらくして、海側の彼女が帰宅した。
家の前の女児に気づき、驚いたような表情をする。
女児の方も、突然現れた人にびっくりしているようだ。
ポカンとした顔で彼女を見上げる。
彼女は女児を抱き上げ、家の中へと連れて入った。
海から上がったままの彼女は、すぐに風呂の支度をする。
そして湯が沸くと、女児を連れて一緒に入った。
風呂の様子は覗かなくてもいいか、と山側へ視線を向ける。
山側の彼女の家では、男児が彼女にあやされて眠っていた。
今のうちに、聴診器を買いに行こう。
ドームの開口部が閉まっていることを確認して、私は買い物に出た。
買い物から帰宅したのは、すっかり日が傾いてからだった。
買ってきたばかりの聴診器を当ててドーム内の音を聞く。
山側の彼女の家では、彼女が男児に話しかける声が聞こえた。彼女は家族が増えたことを喜んでいた。1歳児の彼はまだ話すことができないが、彼女の話をよく聞いていた。
「一人で寂しかったの。あなたも一人なのよね、一緒にこのお家で暮らしましょうね」
男児は彼女の顔をジッと見ていた。彼女はその様子を見て話を続ける。
「私の名前は希和(きわ)というの。あなたにも名前をつけてあげましょうね。……陸(りく)というのはどうかしら」
そう言って、山側の養母の希和は、陸を自らの膝に乗せた。
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