一章

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赤い斑点を地に残し、夕闇の迫る森をあてどなく歩く。 片眼は潰れ、もう片眼は血で霞み、視界など既に無いに等しい。 途中、支えで伸ばした木の幹に甲虫がいたが、別段解することもなく手の平で押しつぶし体を支えた。 後方から聞こえる合戦の音は森中に轟くも、男の耳に届くことはない。 歩くために上げる足が上がらない。霞む声の息使いで気合いを入れるも、男の周りは赤く侵食していく一方だ。 そのまま小さく息を吐くと、支えの無くなった棒のように、男の意識は事切れた。
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