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今日は頑張って浴衣を着た。
髪をきれいに結って簪さして。
下駄を履いて待ち合わせ場所へ。
私を見るなり、彼は黙ってしまった。
花火を見に来たはずなのに、
どんどんと会場の河原と反対の方へ進んでいく。
はぐれないように繋がれた手。
下駄の私に合わせたゆっくりとした歩調。
無言、だけどいつものように優しい彼。
人気のない、高台の神社に着くと、
……肘ドンされた。
「……なあ。それ誘ってんの?
そんなきれいだと、
俺のもんだけにしときたくなるだろ」
……口調がいつもと違う。
戸惑っていると
彼の熱い視線に絡め取られた。
【終】
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