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内部から大きく分厚いドアが開く。
中からまばゆい光りを受けて、老人は少したじろいだ。
少女は微動だにせず、瞬きさえもしない。
案内人の後ろから歩む、姿勢の良い凛とした少女の後ろ姿を、老人は苦々しい思いで見詰めていた。
「本日中は、人間、が商品でございます」
宮殿の大広間を思わせる、豪華なシャンデリアがいくつも天井から下がり、案内人に連れられた富裕層らしき人々が、商品を眺めている。
その華やかな空間に、獣の檻がいくつも並び、中に一人ずつ、商品が納められている。
全てが値札を首から下げられ、全員が希望を無くした表情で佇んでいる。
「面白い趣向ですな」
老人の声は掠れ、威厳を持とうと発した言葉が、緊張からと案内人に悟らせてしまう。
営業スマイルのままの案内人は、老人から少女へと視線を移した。
「今日はお嬢様の遊び相手をお探しとか」
「ええ」
冷笑で返答する彼女に、緊張も驚きも感じ取れず、男は内心薄気味悪い思いに包まれた。
「如何でしょうか、こちらの少年など」
歩く先に、金髪の少年が、全裸で佇んでいる。眉目麗しい姿も、絶望を思わせる表情が、全てを台なしにしている。
「ん……」
少女は首を横に振り、一人先へと歩いていく。
老人は少し後ろから歩き、数時間前の会話を思い出していた。
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