第1章

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   流星群ラジオ                                     やまと そら 「ヒイラギって、本当に変わっているよな」  グリク先生の宇宙学の授業中に、となりの席のクズリがそう言った。  ぼくは少しむっとして、グリク先生がこちらを見ていないのを確認してから、クズリの方へ顔を向けた。教室は明かりを消して薄暗くなっていたが、授業の用意をしているグリク先生の様子がなんとか見えた。 「どういう意味さ?」 「宇宙学が好きな十歳の男の子なんて、どうかしているってこと」 「なんで? おもしろいじゃない?」  こほん、とせき払いが聞こえたので、ぼくは急いで顔を前へ向ける。  グリク先生がビン底眼鏡を押し上げて、ぷっくりとシャボン玉をふくらませた。大きくふくらんだ玉は、黄色く光を放ってぷかぷかと浮かび上がる。 「えー、これを恒星とする。銀河では、恒星の周りを惑星がぐるぐると回っているのだ。どれ、やってみよう」  グリク先生はまたシャボン玉をふくらませて、赤や青の惑星を宙に浮かばせた。それらは、黄色い光を受けてぼんやりと輝きながら、最初に浮かばせた恒星の周りをゆっくり回り始める。ちょうど、ぼくの頭の上を六番目の惑星が通りすぎた。 「宇宙学の内容もおもしろいけどさ、こんなに魔法をふんだんに使うのはグリク先生くらいだよ」 「内容は難しいだろ。でも、魔法のことは認める。あーあ、おれたち子どもも魔法を買えたらいいのに」  クズリは机の上につっぷして、ため息をついた。  子どもには不思議なものを見つける才能があるから、魔法なんて使わなくてもいいんだ。そう、ぼくの父さんも言っていたけれど、やっぱり魔法が買えたらなって、ぼくも思う。
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