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高柳君は、私と同じ高校1年生。
でも同じ高1とはいえ、彼とはクラスは違う。
1学年8クラスあるここの高校は、成績優秀者の集まるトップクラスが2クラス、その他の生徒で編成された普通クラスが6クラスと分けられている。
私はもちろん普通クラス(1-4)。
高柳君はトップクラス(1-1)。
クラス的には接点がなさそうだけれども、体育は1組と4組が合同で行われる。
だから、高柳君のことは知っていた。
何せ、彼は目立つから。
身長は170センチ半ばくらい、スラリと長い手足を持っているけれど半袖から伸びた腕はそれなりにしっかりとした筋肉を携えている。
色素の薄めのふわりとした茶色い髪、そしてそれと同じ茶色い黒目がちの瞳はくっきり二重で。
健康的な肌色も、きりりとした眉も、少し下唇が厚めの色っぽい唇も。
思わず見惚れてしまいそうになる。
加えて成績優秀、スポーツまで万能と、とにかくモテ要素満載なのだ。
いつも彼は男女問わずたくさんの友達に囲まれて、キラキラオーラを放っていた。
平凡かつ地味な私とは、全く世界の違う人。
そしてそんな彼を「ほえ~っ、これぞ学園の王子様。実在するものなんだなぁ」と眺めていたのは最初の数週間だけ。
とある出来事があり、あれ以来私は高柳君のことが思いきり苦手になった。
たぶん、それはお互い様なはず、なのに。
何故、トップクラスの彼が私のクラスにいるのだろう。
そして、何故、私と萌ちゃんの会話に入って来ているんだろう。
驚いている萌ちゃんとは対照的に、テンションが下がって行く私。
私をジッと見ていた高柳君から慌てて視線を外し、私はまたそのフリーペーパーに視線を戻した。
そんな私を見て萌ちゃんが怪訝そうに口を開いた。
『えっと、この映画に行きたいのは千笑だけで………』
『ふーん』
きちんと応えた萌ちゃんに高柳君はそれだけ答えて、4組から去って行った。
………なんだか失礼な人だな。
『一体、なんだったのかな?高柳君』
高柳君の背中を見送った萌ちゃんが首を傾げる。
『ほんと、良く分からない人だよね。
わ、見て!!ここのパンケーキ美味しそう!!』
私の興味は次のページの飲食店情報へと切り替わっていた。
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