第1章 シュロウ大佐の友人

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自慢じゃないが、ソフィおばさんの淹れたコーヒーは美味しい。このミドラルトから遠く離れたキラシュナウトから取り寄せたコーヒー豆を目の前でひいてくれる。おかげで店内はコーヒー豆の香ばしいかおりで食欲をそそる。 この店は養母のソフィおばさんが経営している小さな喫茶店で、ミドラルトの外れの町、ジューカの中央噴水広場の道沿いにある。赤い屋根の、いかにも喫茶店らしい喫茶店だ。中央広場にあるせいか、店内はいつも賑わい、今この時間もモーニングセットを頼む客で満ち溢れている。 ソフィおばさんは、ゆったりしたブラウンカラーの髪で、笑いじわの特徴的な、ふくよかな女性だ。 カウンター席に、俺とバンは座っていた。 今朝はソフィおばさんの作る朝ごはんにありつけなかった。中央広場でイベントが催されるため、ソフィおばさんはバスケットで売るサンドイッチを作るために早朝から支度をしていたようだ。 よく熟れた真っ赤なスライストマトとカリカリに焼けたベーコンを挟んだサンドイッチの最後の一口を頬張る。それを横目で見たバンが黒いコートの内ポケットから白い封筒を出した。 このバンという男は一見奇妙な奴で、まず見た目で年齢がわからない。若くも見えるし、妙に落ち着いた風格でずっと年上にもみえる。それに背中の下のほうまである銀色の髪、季節問わず着ている真っ黒の、それもかかとまであるロングコート。たとえ真夏でも。中にはこれまた真っ黒のスーツを着ている。そして、とにかくでかい。俺より、30センチ以上はでかい。 なにより、ふかい赤色の、突き刺さるような眼光が印象的だ。 耳には幾数ものピアス、首には鉄製のチョーカーやネックレス、手首足首にもアクセサリーをしている。どれもシルバーで、ごつごつした雰囲気を漂わせる。身体は細いのに。
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