第1章

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プロローグ どうしてこうなったのだろう。 僕はどこで何を間違えたのだろう。 もう消えてしまいたい。 死ねば楽になるのだろうか。 でもお母さんは悲しむかな。 お父さんはどうだろう? 先生は何もしてくれなかった。 あれは見ていない。見たいものしか見ない。 何もしない同級生もたくさんいた。いや、そういうやつばかりだ。主犯と共犯。そして野次馬多数。うん。皆見ていた。そして素知らぬ顔してた。憎い。憎い。憎い。 いっそ誰か殺してしまおうか。でもそんな勇気はない。そんな勇気があればこうはならなかったのか。 もし子供が殺人犯だとお母さんは泣くかな。どう思うのかな。愛が足りなかったとか考えるかな。悲しむかな。 お父さんは。お父さんは、きっと、恥と思うかもしれない。弱い僕をずっと蔑む目で見ていた。そしてそっとため息をつくのを何度も見た。僕がいなくなればせいせいするのかもしれない。そしてお母さん詰るんだ。いつも喧嘩ばかり。明るい家庭なんてCMやドラマの中だけの絵空事だ。あんな嘘を垂れ流して、仮面家族を量産させたがるのは、ショウシカ対策のためにも必要で必死なのかな。くだらない。僕には関係ない。 なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。 なんで。 なんで。誰も僕を助けない。 僕はいる。ここにいる。 みんな見てよ。見てるのだから無視しないでよ。 殴られるのは痛いし嫌だ。転ばされたら服は汚れるし、膝はすりむくし。 授業中にうしろから消しゴムかすをぶつけられる。 最初は遊びだったね、それがゲームになったね、そしていつしか誰もやめれなくなったね。チキンレースっていうのを本で読んだ。あれと一緒なのかもしれない。気付くと誰も引き返せない。ひよったやつが次の鬼だ。 そう鬼だ。 僕は鬼の役になった。 誰かに触れたらチェンジしてもらえるわけではない。 いつまでも鬼なんだ。 鬼は嫌われる。触ったら、うわーノロワレル。うわーケガサレタ。そんな声が僕を殴る。 声がいつしか実体を持ち、人の手が僕を殴る。小突くなんて可愛いものは1日しか持たない。すぐに本気の拳。僕は達磨になった。転んでもすぐ起き上がる。起き上がらされる。ふらふらになっても。足がガクガクになっても。 顔はきれいなまま。 腹と内腿はどす黒い。紫が腫れ上がり朱が混じり闇が練り込まれたような藍色をねじ込んだような見たこともない色。人の体ってこんな色が出せるんだ。
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