第1章

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何がきっかけだったんだろうか。 僕は仲の良い友達が何人かいた。いたはずだ。あれは夢だったのかな。休みの日に家に集まってテレビゲームをした。一緒に買い物にも出かけた。月曜の朝には日曜のドラマの話をした。土曜のバラエティの話をした。共に笑った。確かにそんな時間があった。 きっかけは思い出せないくらい些細なことだと思う。 僕が思うきっかけはあれかな。 課外授業でのグループ分けで僕だけがいつもの仲良しグループから外れた。しかたないよね。席が僕だけ離れてるんだもの。 グループ別に話合いをした。 コツン。遅れて笑い声。 コツン。またも笑い声。 僕の頭に何かが当たる。 ただのいたずら。 それに気づいたグループの子も笑う。 うるさいぞー。間延びした声で先生が注意する。 はぁい。気の抜けた返事で生徒は謝る。 先生の隙を見ては僕に消しゴムカスをぶつけてくる。 そのたびに忍び笑いが聞こえる。 一人はずれたのをからかってやれと思ったのだろう。 そしてそれが思いかけず面白くなった。 さらに先生にばれないかというスリルが混じりだした。 いたずらがゲームになった。 僕はシューティングゲームのインベーダー役のように狙撃される役になった。 課外授業が終わっても、国語の時間、数学の時間、英語の時間。どこでも誰かが何かを投げてくる。より遠くから当てると高得点。最初に苦笑い愛想笑いしたのが悪かったのかな。でもあそこでマジに怒ったらつまんないやつと白けたよね。何が正解だったの。誰か教えてよ。 子供が、うまくいなす方法を大人は教えてくれなかった。いたずら、ゲームから抜けるにはどうしたらいいの? 仲良しグループでも一人孤立した時はどうすればいいのかな。どうしたら何もなかったようにまたグループに溶け込めるのかな。 グループ以外の子が投げ出すのに時間はいらなかったよね。僕はみんなの標的になった。文字通りの的になり、何かをぶつけられる。そして嘲笑されるようになる。 物を落とされたり隠されたり、そして壊されるまでも早かった。子供の団結力ってすごいよね。 鬼を作ると徹底的になれるんだね。最初はヤメナヨーなんて言ってた女子も、いつのまにか笑ってる。楽しいのかな。 鬼がいるとほかのみんなは笑顔になれるんだね。鬼だけが泣いてればいいのかな。鬼だってさ。鬼だって笑いたいんだよ。
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