第1章

5/40
前へ
/40ページ
次へ
 私が入った去年は早くてもう散りだしていたのに。  桜は日本を代表する花だ。春の訪れを告げると共に新入生を迎え、卒業生を送り出す。  言い古された言葉では出逢いと別れの象徴かもしれない。  新たなクラスメイトを迎えた1年はどうなるのだろうか。  クラス分け。いつも緊張する瞬間だ。仲良しのあの子はいるだろうか。これはその1年を決定付ける最大の要因になりえる。大げさでなく本当に。友人が一人しかいない子がその子と分かれたら悲惨なことになる。引っ込み思案で友人のいない子が小学生の頃にたった一人の友人と離れたら案の定話す人もいなく寂しい1年を過ごした。積極的ないじめにあわなかっただけ彼女はましかもしれないが、ほぼいない人のような扱いだったのを覚えている。  私は友人が一人ではないが、それでも親友と一緒かどうかは大きい。  クラスの記された紙が廊下に貼り出されている。たくさんの頭をあり見えない。ジレンマを感じながらも少しずつ紙ににじりより見ることができた。  あった。私の名前。そして親友の名前。よし!これで今年もなんとかなる。次いで上から目を流す。嫌いなあいつがいなければなおいい。ガキ大将で乱暴なあの男子もいないほうがいいな。あとは常にとりまきをひきつれるお嬢様のあいつも。  担任は今年異動してきた若い男の先生だ。今年初めてなのでどういった先生かわからない。優しくて楽な先生ならいいな。授業も楽しくわかりやすいのが理想だ。 「アイ?また一緒だね。よかった」教室に入り皆自分の席に鞄を置くとすぐさま仲良しなグループを形成する。私も類にもれずに親友を探そうとしたら、それより先に向こうから寄ってきた。「今年も1年よろしくねチカ」  4月は手探りの時期だ。先生も生徒も新しいクラスに馴染もうとする。よく知っている子もいれば初めて話す子もいる。そこで新たなグループができることもあるし、仲良かった子同士が離れることもある。思春期の私たちには日々が戦場のような気分だ。うっかりした発言一つで友情は悲しくもあっけなくシャボン玉のようにゆらゆらしたと思うと急に割れる。気を遣うほど張りつめはしないけども緊張感を忘れたらだめだ。特に女子はまずい。はぶられたら終わる。機嫌の底がどこにあるかは本人にすらわからないのだから。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加