第一章

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跳ね返った血が顔につく。 「……無駄なんだよ」 俺は顔についた血を拭った。 「お前ら行くぞ」 俺は血振りをして刀を収め、何事もなかったかのように隊士たちを率いて歩き出した。 その後は何もなかった。 「土方さん、入るよ」 俺は血のついた羽織を脱いで部屋に入った。 煙管を咥えて机とにらめっこしている土方さんを見て笑った。 「俺の顔になんかついてるか?」 「いいや、ついてませんよ。男を一人斬り捨てました。それ以外は何もありません」 「また斬ったのか……」 溜め息を吐き、それと同時に吐き出される紫煙。 俺はこの煙が苦手だった。 「俺だと知って向かってきたんだからそれくらい覚悟してる筈でしょう?」 「ほぉ……。もうお前に向かってくる奴なんていないと思ってたんだがな」 俺だってそう思ってた。 新撰組の名が広がると同時に俺の名前も広がった。 こんな田舎侍に負けてるようじゃ武士も落ちぶれたもんだ。
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