The KILL

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 2──六月二十三日  依然、胴体も頭部も見つからない。もしかしたら、また別な路線上にあるのか、或いは、まだ犯人が持っているのか。  どんな気持ちで少女の四肢を切断に至って、未だに遺体を持っているのか。  朝の通勤車両の中に犯人はいた? 未来が乗る十条駅も赤羽も同じ路線上にある。気味が悪い。  昼を過ぎたあたりで、学が、青ざめた顔で遅い昼食となったパンを頬張っている未来の元にやって来た。 「小柳さん……見て欲しいものが……」 「なに? アニメだったら見ないから」  署のパソコンだというのに、学はどうしても薦めたいアニメがあると熱弁して半ば無理やり観させられたことがあった。  学は俗に言うオタクだ。今しているネクタイだって、裏側にアニメの女の子が描かれた物だ。表から見れば普通のネクタイにしか見えないから、よく考えたものだと、全く興味の無い未来は思った。そこまでしてアニメキャラが描かれた物を身に着けたいのかとも。  学のデスクのパソコンは、『スマイルムービー』という動画サイトを映していた。 「……前から思ってたんだけど、仕事中になんで動画サイト観てんの?」 「でも、これ……」  再生すると、音声は消してあるようで流れないが、手足を縛られた裸の少女が映っていた。  どう見ても怯えているが、口に何か入れられているせいで声は出ない。それでも、その声はパソコンを通じて聞こえてきそうだ。 「この……子は……」  知らない少女じゃない。  口の中にあるパンが不味い。なんでハンバーグコロッケパンなんか食べてる時にこんな物を見せて来たんだこいつは。苛立つ未来の事などお構いなく、動画は進行する。  ヌッと現れたのは、間抜けなひょっとこのお面を着けた髪の長い男だった。多分かつらだろう。腰まで伸びているわりに手入れがされていない。  投稿者の名前は『零時』。丁度正午に投稿されたから、それに合わせたものかは今はわからない。  少女の前に座り込むと、ひょっとこはカメラを見る。  その右手にあるナイフを、カメラに得意げに見せると、未来はパンを落としてしまった。何が起きるか予想がつく。
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