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「やめて……」
「中継じゃないんですから聞こえませんよ」
「わかってる!!」
その声に、室内にいた署員たちも、パソコンの周りに集まって来た。
ナイフは一切の容赦も無く少女の──滝沢凛の目に刺さった。
右目を抉る。その眼球を、残った左目の前に見せていた。
その想像しがたい痛みに、手足をばたつかせたいところだろう。しかし、縛られている為にそれは出来ない。代わりに、芋虫のように身体をうねらせるだけだった。
観ていた署員の全員が一様に顔を曇らせた。続きは見まいと目を背けた者もいた。
ナイフを捨てると、今度は電動の丸のこぎりを出した。その稼働する音を聞かせるように、好調な稼働ぶりを見せるように、ひょっとこは再びカメラの前にそれを見せた。
「この部屋、昨日のマンションだ」
右足の付け根に当てられた刃は、容赦無く、柔らかそうな肉を引きちぎり、血を噴き上げた。火花が飛び散るのは見たことがあったが、それが液体というのは初めて見た。
四肢が、切断されていく。そして、首も。ごろんと落ちた首は、絶叫したままだった。
映像は、そこで終わった。
行方不明事件は解決。最も最悪な形で。
「壁には血の一滴も無い……あの壁紙で拭き取れるわけがない」
「でも、実際にこうして血が飛び散ってますよ……」
「今晩、もう一度聞き込みに行こ」
部屋が違う。留守の部屋のどれかが実際に犯行を行った部屋だった? 通報は誰がした?
署員の一人が手を挙げて言う。
「この動画、行方不明の子だったら親御さんに確認してもらった方が良いんじゃないか? まぁ、間違いは無さそうだけど……」
「……わかりました。私が行きます」
何を思って実の娘が殺される様を両親に見せなければいけないのか。気が滅入る。学のパソコンに動画を保存し、動画サイトに削除要請を出したが、しばらくは拡散されるかもしれない。
怖いもの見たさで観るんだろうが、これは紛れもない現実だ。
その現実に、年配の署員は渋い顔で呟いた。
「まるで影無の再来だな」
その事件を思い出し、若手以外の全員の顔が曇った。
「エイムってなんですか?」
未来はその、茶葉をすすったような顔の署員に尋ねた。
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