The KILL

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 仕事用のスマホを取り出して、未来は報告した。 「例の女の子、行方不明の女の子でした。今から署に戻ります」 「いや、二人で聞き込みに向かってくれ。こっちは通報者の捜索も始める」 「はい。了解です」  運転席で待つ学は、未來が車に乗り込むなり、堰を切ったように口を開く。 「どうでした?」 「当たり。昨日のマンション向かって。タバコ持ってる?」 「え? 吸ってましたっけ?」 「やめてたけど吸いたくなったから聞いてんの」 「僕は吸わないから持ってません」 「どっかコンビニ寄って」  これタクシーじゃないんですよぉ? そう言おうとしたが、あまりに機嫌が悪そうで、大人しく最寄のコンビニを探すことにした。  不幸配達人にでもなった気分だった。娘が見つかったと思ったはずだ。現に見つかったのはまだ四肢だけ。届けられたのは訃報という名の不幸だけ。  こんな事の為に警官になったわけじゃないのに。  コンビニでパトカーは停まった。何かあったのかと客も店員も驚いた顔をしていた。 「セブンスター《セッタ》一こ」  レジに直行してそれだけを買うと、すぐさま退店。 「パトカーって目立ちますね」 「日本で一番目立つだろうね」  タバコを一本咥えて、ライターが無い事に気付く。箱をフロントガラスに投げつけて、背もたれに完全に身を任せた。 「な、何かあったんですか? さっきの家で」 「別に。なんで?」 「不機嫌そうなので……」 「絶対モテないね、学は」 「昨日の人……灰人君でしたっけ? 小柳さんはあぁいうのが良いんですか? そういえば財布返したんですか?」  地雷になるかと思ったが、この話題は成功だったと、飛び起きた未来を横目で見て確信した。 「返した上に一緒にご飯まで行ってさ~。お持ち帰りして良いよって言ったら拉致で逮捕されない? とか言って。可愛くない?」 「……僕はちょっとわかりません」 「外見だってさ、ポメラニアンみたいで可愛いし」 「犬だったら僕だって犬系ですよ。どこまでも小柳さんについて行きますから!!」 「黙れ雑種」
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