The KILL

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     圭司は怒りが治まらなかった。これは父親なら当然だろうと自分に言い聞かせた。俺が異常なわけじゃない。誰だって、娘の裸体をネットに公開された上に殺されたら、怒るのが当然だ。  殺してやりたいと思うのが当然だ。  これは俺の、『滝沢圭司』の怒りじゃない。『父親』の怒りだ。  ぶつぶつとそう呟いては、手には忘れていた感触が蘇っていた。  あのひょっとこ野郎も同じ感触を味わったはずだ。俺の娘で。そう思うと憎らしくてしょうがない。  あのお面の意図はなんだ? 俺を馬鹿にしているのか?   影無は全く表情の見えない、白いお面を被っていた。それをあの間抜けな顔に変えられたのでは挑発されているような気がしてならない。 「ちょっと出かけてくる」 「どこ行くの?」 「散歩だ」 「犯人はまだ捕まっていないし、わたしたちに恨みがあるのかもしれないのよ?」 「大丈夫だ。凛は偶然選ばれただけだ」  恨みがあったから殺したわけじゃない。ましてや、少女の裸体に興味があったわけでもない。ただ虫や小動物を殺しているうちに誰かを殺してみたくて、それが近場にいた女の子になっただけだった。  もう、圭司はその被害者の名前も顔も覚えていない。  ということは、今回の犯人も凛の顔も覚えていないはずだ。  この辺の中学生が犯人だと思いたいところだが、映像から考えてももう少し年上のように思える。  胴体が発見されたばかりに、圭司は逮捕に繋がった。十才の女の子のその小さな身体に、体液が付着していたからだ。  今回の犯人はその轍を踏まえて胴体を隠し続けるだろう。  警察にはいくらか犯罪捜査に優秀な人材がいるはずだ。しかし、この件に関して自分を上回る者はいないだろうと圭司は確信していた。なにせ、『零時』は模倣犯だ。そして、犯人は一人だと断言出来る。  自転車で深夜中にでも四肢を分散して設置することが出来る。経験済みだ。
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