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学は激怒した。
『零時事件』と呼ばれる事件の犯人像は、連日の報道番組のコメンテーター達がこぞって『少女性愛者=アニメ好き』の成人男性と決めつけるように発言していたからだ。
学はアニメが大好きだ。特に、山場も落ちも無く、少女ばかり出てのんびりと展開していくようものが。時折、画面の色の肌色率が高い時もあるが、別に学は三次元の少女にそれを求めはしない。
二次元と三次元。理想と現実。学はそう線引きしている。線というよりは、高い壁のように思える。
学がその壁を越えて仲良くなれた(と思っている)三次元の女性は、小柳未來という上司だけだ。
その上司に、昼ご飯を食いながら、今日も同じような愚痴をこぼしていた。最初は、その怒りをなだめるように聞いてくれていたのだが、さすがに、三日目の今日はそういうわけにもいかなかった。
「大体ですよ! あのコメンテーターってなんですか! 的外れな事を言って。オタクをなんだと思ってるんですか!?」
「うん」
「アニメを観て犯罪を起こすんなら、リアルの影響ってどれだけ小さいんだって話ですよ!!」
「うん」
「そもそも、リアルの小学生って可愛くないですよ。こう……性的な興奮は無いし」
「うん」
スマホを片手に、自分の見たい、全く無関係なページを閲覧。こういう時間も無いと、憂鬱になる一方だ。
「あ! 小柳さんもわかってくれますか!?」
「うん」
今年の夏は何着よっかな~。白いブラウスも欲しいなぁ。コンビニで買ったドーナツを片手に、オタク談義は上の空。
「来期のアニメも来週から始ま──」
「うん」
あ、サンダルも欲しい。相槌もそこそこに、別なサイトに飛ぶ。
「小柳さん? 聞いてますか? 僕の話」
「うん」
「絶対聞いてませんよ! わかってますよ。小柳さんみたいなリア充は僕の気持ちなんてわかりませんよ。どうせ休みの日はこれから海でバーベキューとかやっちゃうんですよね。どうせ酒飲みながらウエーイとか言って男と騒ぐんですよ」
すげー偏見だなと思いつつ、サンダルをチェック。あ~、クソ。サイズ無いし。
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