The KILL

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   結局、その日は胴体は見つからなかった。行方不明事件の捜査も一切の進展も無く、同じ事件であるという線が濃くなった。  そんな重い空気から解放されたように、未来は警察署から出た途端にスマホを取り出した。仕事用ではなく、プライベート用の。  名刺に書かれた番号を即座に打ち、発信。  コール音が続く。よくよく考えたら、夜の八時過ぎにいきなり知らない番号から来て出るわけがない。諦めて耳からスマホを離した時、 『はい、もしもし』 「あ……い、いきなり電話してゴメン! 灰人君の財布拾って預かってるんだけどさ。場所指定してくれたら今からでも行くから」 『あ~! その声、昼間の婦警さん?』  覚えててくれた事に、飛び上がりそうになったけれど、いくら業務が終わったからと言って、あんな事件が起きている最中に署の前でそれは無いだろうと、堪えられた。大丈夫、私はまだ冷静だと、未来はホッとして歩き出した。 「そうそう。直接届けた方が早いかと思って中身開けたけどゴメンね。で、どこに行けば良い?」 『そうですね……婦警さんは今どこにいるんですか?』 「私は今仕事終わって渋谷第二警察署を出たとこ」 『だったら八時半に渋谷駅にしましょう。ハチ公口で。歩いて行けるんで』 「了解です」  職業病か、思わずそんな返事になってしまって、未来は一人で苦笑いした。 『じゃあ、また後で』 「うん。気を付けてね。一応……今の世の中物騒だから」 『はい』  言いかけた。女児をバラバラにして殺害した犯人がいるということを。  件のマンションは渋谷でも、四肢の発見場所は右腕が新宿の自販機の中。左腕が池袋の西口公園。右足は中野の神田川。左足は赤羽駅の自販機の中。  そんな切断された人体を持って、電車で移動していたと考えると胸糞悪い話だった。もしかしたら、自分が通勤している電車の中にもそいつはいたのかもしれない。そう考えだしたらキリがない。これは、犯人に上手くやられているということだ。  どちらにしても、渋谷のマンションから新宿まで行って、そこで乗り換えたはずだ。  その路線が二本であることから、犯人は単独ではないというのが今の警察の見方だ。
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