The KILL

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 スマホのニュースサイトによると、例の殺人事件は公開されたらしい。気が滅入る。これからは早々に解決しなければ、やれ警察は遅いだの役立たずだの言われることになる。  重たい足取りで待ち合わせ場所に向かうと、灰人は今着いたらしく、キョロキョロと辺りを見回していた。  あぁ~、このまま見ていたい。けど、そういうわけにもいかず、未来は足を早めた。 「灰人君、お待たせ!」  ニコリと笑った灰人は会釈をしただけなのに、あの冴えない芋男と一日いたせいか、別世界の人間に思えた。僅かな挙動でも動く髪がキラキラしている。 「婦警さんが拾ってくれて良かったです」 「そんなに時間は経ってないと思うけど、一応中身確認して」  返してしまうのが惜しい。けど、免許証も銀行のカードもクレジットカードだって入っている財布を、何日も預かるわけにはいかない。  中身を確認して、灰人は顔を上げる。 「大丈夫です。何も書いたりとかしなくて良いんですか?」 「あ~、うん。でも今回だけね。人によっちゃ正式な手続きも取らなきゃいけないんだから」 「じゃあ、尚更……名前なんて言うんですか?」 「私!? わ、私は小柳未來……に、二十七歳」  彼氏無し! まで言おうとしたけど、さすがに今言う必要は無いだろうと、至って冷静に未来の頭は回った。歳も言う必要は無いのだが。 「じゃあ、未来さんに拾って貰えて良かったです。良かったら、このあと時間ありますか? お礼もしたいしご飯でも一緒に行きませんか?」 「行………………く」  いつ招集が掛かるかもわからないけど、この機を逃したら次はもう無いはずだ。そう決めつけて、未来は頷いた。 「じゃあ、行きましょう。お酒とかあった方が良いですか?」 「……あぁ~……わ、私弱いから。でも良い店知ってるなら行きたい」  署の人間が聞いたら卒倒するような大嘘だ。新人の歓迎会で酒豪の座を欲しいままにしたのだから。  灰人は、未来が期待した通りの男だった。
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