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……レディースエン……ジェントルメーン……。
人魚の姿に模した女団長のその声で、華やかな舞台を彩った団員達が一人づつステージの上に集まっていく。
ライオンの火縄潜りを見せてくれた美しい女教師、怪力自慢の狼男、変幻自在の柔軟な身体を持つ蛇男、可愛い可愛いティンカーベルの姉妹……彼女達がおそらくこのメンバーの中では最年少だろう。
初めはそのあどけない表情の中に緊張の色が見え隠れしていたが、終幕を迎えた今の彼女達の姿はすっかり堂に入っている。
観客からの絶え間ない拍手の中、団員達は深々と頭を下げて一礼をした。
そして団長が一歩前に出て何やら呟き始めた。
観客の圧倒的な歓声に紛れてその言葉の詳細は聞き取ることが出来ないが、腕を高く挙げて手招きするような仕草から見ると、どうやら誰かを呼び出しているらしい。
狼男が、その筋肉隆々の身体からは想像出来ないほどの繊細な踊りを披露し、その何者かを歓迎した。
そしてステージの裏袖から、ゆったりとした動作でその者が現れた。
団員達が皆、一様に拍手をする。
観客達のボルテージはいよいよ高まっていった。
裏袖から現れたのは……ピエロだった。
顔を真っ白に染め上げ、鼻には赤い玉を付けている。
目元はパンダのように黒く、唇にはその外周を沿うかのように赤い紅が多量に塗られている。
おかげで、元の唇の大きさがどの程度のものなのかが全く判別つかない。
頭には漆黒のシルクハットを被り、朱色の縮れた髪をサイドから靡かせていた。
そんな異形な姿のピエロ。
観客と団員の大きな拍手で迎えられたそのピエロは、何やら口許をモゴモゴとさせた。
そして両手を広げ、ステージの前に一歩一歩と進んでいく……。
そのピエロの視線は、とある一点に向けられている気がした。
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