ステージ1 英国少女ちりんちりん事件

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「はぁっ、はぁっ……ついて、ねぇ……なぁ!」  俺自身の運の悪さを呪いつつ、学校へ続く下り坂を全速力で駆ける。  九月とはいえ、まだまだ夏のように暑い。日光がアスファルトに照り返し、上からも下からも俺を焦がしてくる。  必死に地面を蹴った。速度がつきすぎたせいか、足がもつれて転びそうになる。慌ててバランスを取り、踏ん張って前を向く。汗だくになりながらも通学路をダッシュした。  やばい。このままだと遅刻してしまう。  朝起きたら、枕元にあるアナログの目覚まし時計は午前二時五分を示していた。しかし、窓の外から鳥のさえずりが聞こえていたので、深夜でないことは明白だった。ふはは、電池切れだよこんちくしょう。  慌ててスマホで時間を確認する。予想どおり完全に寝坊していた。  とはいえ、走れば間に合う時間帯でもあった。俺は急いで支度をして家を飛び出した。  で、今に至る。  汗があごまで流れていき、雫となって地面に落ちる。下を見ればアスファルトに小さな染みができているのだろうが、そんなものを見ている余裕はない。腕を振り、ぬるい風を切ってなお走った。  そのときだった。 「ぎゃぁぁぁぁあああああ!」  たった今下ってきた坂の上の方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。  振り返ると、そこには自転車に乗った外国人の金髪女子がいた。うちの学校の制服を着ているけど……あんな目立つ女の子いたっけ?  一度見ただけでも、この子のことは忘れないだろう。それほどまでに彼女の容姿は目を引くものがある。  金糸のように細い長髪が向かい風になびいている。肌は新雪のように白く、紺碧の瞳は大きく見開いていた。  顔に幼さが残ってはいるけど、まるで絵に描いたような美少女だなと思った。  その美少女はママチャリに乗って坂を下りてくるのだが……なんでノーブレーキなの?  というか……俺のほうに来てるけど!?
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