プロローグ

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今日も暑かったなァ。 今年から洋南大学の一年生になった荒北は、一人暮らしをしているアパートへ帰る道で毎日同じことを思う。 荒北は暑いのが得意ではなく、あまり暑すぎるとすぐにバテてしまう。今日も練習中に目眩がして、バランスを崩して落車してしまった。自分が暑さにやられる度に過剰な程心配してくれる金城や待宮のことを考えると、いい加減迷惑をかけるのをやめたいのだが、金城たちは体質だから仕方無いなんて言う。今まで倒れても自分でどうにかするのが当たり前のチームにいたから、何となく甘えてしまいそうになるが、荒北自身甘えは許さないタイプなのでやはり迷惑はかけたくない。 何とかならないかねェと思いながらいつもこの道を歩く。高校時代、練習終わりに風呂でブッ倒れた時は、東堂に看病してもらったっけーーー リュックから鍵を出し、アパートの2階の自分の部屋を見る。 「...あァ?」 荒北は、ドアの前に人影があることに気がついた。今夜人が訪問してくる予定はないし、宅急便も頼んでいない。となると、空き巣の類か。荒北は眉をしかめて頭をかいた。 「ッたく面倒くせェ、ンでオレの部屋なんだヨ」 とりあえず警察を呼ぼうと携帯を取り出した瞬間、人影が動きこちらを見た。ゲッ、通報しようとしたのバレたか、と荒北が焦っていると、人影が声をあげた。 「荒北ーーッ!!遅いぞっ待ちくたびれたではないかっ」 まさに鳩が豆鉄砲をくらった、という表現がふさわしい荒北の表情に、人影は指を差して高く笑った。 「何だ荒北その顔はッ!野獣のやの字も無いなッワッハッハ!」 あの甲高い声、腹の立つ笑い方、うざったい話し方。あれは、荒北の高校時代の同級生そのものだった。 「東堂...お前何でここに...」
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