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笑い声。
甲高い笑い声。
男性を惹きつける笑い声。
その声が聴けるお相手というのは、ある程度の立場とある程度の容姿とある程度の…
「倉本君って、本当に面白いね。もうそんなに面白かったら、私好きになっちゃうよ。」
男子というのはこの言葉で9割がた好きになるのではないだろうか。
「放課後時間ある?教えて欲しい所があって…ここなんだけどね…」
そう言ってすっと近づいて教科書と自分の香りを男子に近づける技を、彼女はいつ取得したのだろうか。
「倉本君って本当に優しいね。彼女になる女子が羨ましいな。私みたいなのは到底無理だな…」
この言葉の中に、一体幾つの嘘と、幾つの本当が混じっているのだろうか。
これは絶対学校のテストには出ない。
私にはもしかしたら一生かけてもわからないかもしれない、でもどうしても解答を知りたい問題である。
「相変わらずモテモテだね、彩花。」
「ほんとにね。」
「次のターゲットは倉本なの?あいつ彼女いるよ?」
「知ってる。」
その四文字の重さと彼女の声のトーンに飲んでたジュースを箱を潰しそうになった。
「あれ?香世ちゃん大丈夫?」
「あ、ごめん。ちょっと気管に入っちゃって。」
「大丈夫?それ果汁強そうだし喉傷めるんじゃない?香世っていつもむせてる気がする。」
そう言った彼女の目線は、私ではなくスマホの画面と廊下に見える隣のクラスの、
いかにもヒエラルキーでは下位を見下しているであろう匂い漂う集団に向いていた。
「でもさっきから倉本こっち見てない?彩花の事見てるね。」
「どうするの?彼女確か先輩でしょ?大丈夫?」
「あっちが勝手に好きになったって言えばいいんじゃない。」
彼女は自分の唇を少しだけ触ってちらっと倉本君の方を見た。少し笑って気がした。
こういう人がきっとこの先もずっと幸せな生活を送るのだろうと、少し湿気の多い教室での午後を過ごしていた。
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