第1章

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あの時と同じ幼い怒りの表情を、君は知らない男に見せていた。 飼い犬に逃げられた飼い主の心持。 昏い夕暮れと、冷たい秋風の中で、体が混ざりゆくかのような感覚。 あの男が誰だとか、どういう経緯があったとかはどうでもいい。 僕にとっての唯一最大の関心事は、どこの馬の骨ともしれない人間に、僕の宝物がこうも簡単に明け渡されたこと。 君は僕を、裏切ったのだ。
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