第15章

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「ちょ、マジ?」 『言い寄られる』って、アレでしょ? その、そういう意味での『好き』で、交際を求められるってこと、でしょ? マジか! 宵月先生、マジですか! こう言っちゃあ何だけど、宵月先生ってば、美少年専門じゃあなかったの? そりゃあ荒井さんは、細面(ほそおもて)でシュッとしたお顔の造りよ? でもって、とらさんと同じく、二十五、六歳にしか見えないわよ? でもでも、はっきり言って中身はアラサー! 15年前ならともかく、どこをどう間違えたら今の荒井さんにそんな気持ちにな……。 「あの先生、確かに腕は良かったから、あれさえ無ければと悔やまれるんだがね。 治療以外の時間に、私の尻の形や触れ心地の良さについて、それはそれは熱く囁かれてねぇ。あれには、本当に閉口したよ」 尻、の……。 「治療中は怖いくらい真面目だから尚更、その落差が恐ろしくてねぇ。 その前の戦の日々のほうが、ずっと楽に思えたくらいだよ」 苦笑しながら私に注いでくれてたお茶の急須をお盆に置き、「よいしょ」って、またお布団でうつ伏せになった荒井さんの一連の動きで、ようやく合点がいった。 あ……荒井さんの怪我……お尻……じゃん……。 はっ! 待って? 「ととっ、とらさんはっ? とらさんの治療の時は大丈夫だったの? 胸っ……お胸っ……とらさっ……」 あの先生。まさか、とらさんのお胸にも同じようにしたんじゃっ……ぎゃあぁああっ、許せない! 確認! 確認しなくちゃ! てゆうか千代菊さんの治療、まだ終わんないの? 「とらさん! とらさっ……あっ! なっ、何してんの!?」 心配でたまらず控えの間にダッシュで駆け込んでみれば、とらさんの広い胸に抱きつくようにして包帯を巻いてる途中の姿が、ソコに! 「ああっ、ずるい! 私もソレやりたい!」 とらさんのお胸にぴったりとくっついてその背中に腕を回していた十蔵さんが、私の大声に目を丸くして、そのままの体勢で固まった。
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