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「うんうん! それでっ?」
ずりっと片膝を前に出して、荒井さんに話の続きをねだった。
ワクワクを堪えきれずに。
その『新選組の面々』のお話、プリーズ!
「あはは……ものすごい笑顔だねぇ、葵さん。まぁ、良いが」
前のめりの私にちょっと引きつった笑みを向けてきた荒井さんが、いったんお茶を口にした。
ふぅ、とひと息ついて、また口を開く。
「富士丸に同乗していたのは、先程とらが答えたように、局長の近藤、副長の土方、それに幹部たちだった。
その中に原田も居たよ。葵さんの口ぶりから察するに、養楽堂で言葉を交わしたのかい?」
「あ、うん」
変なの。
荒井さんてば、私への質問なのに、なぜかとらさんをチラ見しながら聞いてきたわ。
「他には、私と同様、負傷兵たちが数多く乗船していた。
近藤も肩に傷を負っていたから、医者の手当てを受ける時に少し話をしたよ」
んま! 近藤さんもお怪我を!?
「話の内容は様々だったが、互いの愛読書や刀の話もしたね……あぁ、そうだ。
凄腕の剣客で有名な沖田総司も一緒に乗っていたらしいが、残念ながら病に伏せているとかで、話をすることはできなかったんだよ。
あれは、心残りだったねぇ」
ぎゃあぁ、沖田さん!
沖田さんと同じ空気を吸ってたの? 荒井さん!
なんて、羨ましいっ!
「……葵さん? ちょっと、近い……んじゃあないかな? 顔が」
……え?
あ、あら。私ったら、いつの間にかさらにずずいっと膝を前に進めて、荒井さんの間近にまで顔を近づけてたわ。
でも、大丈夫。ノープロブレム。
どういうわけか、荒井さんの視線が私の頭の真上に向いてるけど、私ならこのままでOKよ。
「気にしないで。さぁ、続きどうぞ!」
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