第18章

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「――たっだいまー!」 とはいえ、せつなさにガッツリ浸ってるところを瀧川の皆さんに見せるわけにもいかないから、帰宅したら明るく振る舞わなきゃ。 「お帰りなさいませ、葵様」 「あっ、小梅さん。お団子買ってきたわよー。皆で一緒に食べましょっ」 美味しいお団子、たくさん買ってきたしね! 「まぁ、お団子ですか? 私たちにまで、ありがとうございます。 先ほど山岡様がお見えになられまして、奥でお茶をあがられておいでですよ。そちらに行かれますか?」 「えっ、鉄さんが? うん、行く行くー。そこで皆で食べよ」 鉄さん、来てたんだ。すごく忙しいはずなのに。 もしかして、とらさんから聞いたのかな? 「ねぇ、小梅さん。鉄さん、豆菊さんにまた干し柿持ってきたの?」 「はい、左様です。山岡様には、ご多忙の中、菊江にいつもお気遣いいただいて有り難いことです」 お茶やお皿の用意をしながら小梅さんに尋ねたら、思ってた通りの答えが返ってきた。 やっぱり! 一昨日から熱を出して寝込んでる豆菊さんの好物を持ってきたんだ。 勝ち気で生意気なところがチャームポイントの豆菊さんだけど、実は身体が弱くて、頻繁に風邪をひいては寝込んでる。 小梅さん、豆菊さん姉妹のお父さんと知り合いで、ふたりが両親と死別した後、瀧川に姉妹の身柄を預けた鉄さんは、それ以降ずっと親代わりとして色々と援助して気遣ってるらしいの。 前に、『守屋(もりや)は、実に優秀な国学者だった。流行病(はやりやまい)であっさり死んでなければなぁ。返す返すも口惜しいことだ』って、とらさんや荒井さんと話してるところを見たことがある。 国学者さんが何をする職業なのか、イマイチよくわかんないけど。守屋さんって、すごいお人だったのねぇ。
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