2 ヨーコ先生

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2 ヨーコ先生

 ――昼休み。 クラスメートの三嶋カズエに、 「ちょっと来生。顔かしてくれる?」 頭の上から声をかけられた。 いつもなら、 「お、ケンカか? 買うぜ!」 と返すところだけれど、三嶋カズエは女だ。 髪も短くてしゃべり方も乱暴。 でも中学も一緒で、高1ん時も同じクラスだったから、いいヤツだってことは知っている。 話しても気さくだし、気を使わなくてていいのが楽だ。 でも中学ん時は、 「アキ、宿題見せてよ」 「甘いなカズ。オレがやってくると思ったのか?」 と名前で呼び合っていたのが、お互い苗字呼びになった。 まあ、大人になったという証拠だろう。 だから、高校になってもしゃべる方の女だけど、でも女相手にケンカはない。 殴り合い以外のケンカは、オレは御免こうむる。 だから、 「ナニ?」 オレは突っ伏していた机から、のろりと頭だけあげて聞いた。 すると、 「あの子」 三嶋は顎をしゃくって、教室の入り口を示す。 そこには髪の長い、なんだかふわふわした印象の女子が立っていた。 「来生に話があるんだって。聞いてやって」 ああ、ものすごくメンドクセェ。 今そんな気分じゃない。 だけど、三嶋の頼みだ。 オレはダラダラと立ち上がった。
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