雨が降りやんでも~夏夜のおとぎ話~

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* 紘斗と出会ったのがいつだったのか。 やっぱりあたしの脳みそは役に立たない。 いまは箱のなかに住んでいるけれど、ちょっと昔はもっとやわらかい香りのなかにいた。 家の屋根裏でチュウチュウ――紘斗のとは違う種類のチュウと鳴く、すばしっこい丸々としたのを追いかけたり捕まえたり。 毛のない尻尾がやたらと長くて、一度だけ踏んづけたことがあるけれど気持ち悪かった。 それ以来、捕まえるのはやめて脅すだけにした。 だって紘斗のじぃちゃんとばぁちゃんがせっかく作ったごはんの“もと”を食べ荒らしてしまうから。 外に出て気まぐれに散歩しながら、緑と風のなかで眠ったり、時間の流れが穏やかだった。
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