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その時だ。
『「コキ・・・ッ」』
何かが欠けた時のような小さな音がした。
「ちょっと、何してくれるんだ!」
私の腕を乱暴に振りほどき険しい顔で怒鳴る彼。
「え?あっ・・・」
鼻が、
彼の左鼻の形が・・・
おかしい。
それに左鼻の脇に今までなかったアザが三つ。
「メンテナンス前なんだよ! 全く何回もイジってるとすぐ崩れちまう」
「――――」
「レーザー治療もしたのにまた同じ所にできて困ったもんだよ!特殊メイク並みに隠してるのに急に抱きつくんじゃねーよ」
いつもの彼じゃない、一体何が起こってるというの?
訳がわからず放心状態の私に向かって薄笑いを浮かべながらこう続けた。
「アンタいい子だからもうちょっと普通の恋人ごっこしてあげてたかったんだけど、仕方ないか」
今度は右側のポケットからビニール袋を取り出すと中のガーゼのハンカチで私の顔を覆った。
その時頭の中にフッと浮かんだのは近くの交番の前に貼ってあった連続婦女暴行殺人犯の指名手配の男の写真。
左の鼻の脇に 小さなアザが 三つ
まさか・・・・・・。
薄れていく意識の中最後に脳裏をかすめたのはあろうことかこんな思いだった。。
『あのプレゼントの箱の中身、何だったか知りたかった・・・』
【 完 】
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