大好きな彼だったのに

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 膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしている愛猫のミルをそっと撫でながら話しかける。 「今日は大好きな人が来るんだよ、いい子にしててね」 私の嬉しい気持ちが伝わったのかミルはニャーと小さく鳴いた。 ――――ピンポーン チャイムが鳴るとミルは膝から飛び降り玄関に向かい緊張しながら私もその後を追う。 ドアを開けるとそこにはいつもの優しい笑顔の彼が立っていた。 「今日はお招きありがとう」 その途端、ミルが尻尾を太くして彼に対して威嚇する。 人見知りしない大人しい子なのにどうしたんだろう・・・。 「可愛い猫だね、知らない男が来て驚いたかな?」 うなり声をあげるミルを抱きかかえ別の部屋のゲージに入れる。 後で美味しい缶詰あげるからね。 彼とは映画館で隣り同士になったのをキッカケに仲良くなり付き合い始めてからまだ二ヶ月と日は浅い。 でもスラーッとした体形にアイドル並みのルックス、なんといっても紳士的で温和な性格に私はぞっこんだった。 居間に案内し、ソファーに座った彼の隣りに私もちゃっかり座ってみる。 彼はパンツの右ポケットから綺麗にラッピングされた小さな包みを取り出して膝にそっと置いた。 「プレゼント。君にきっと似合うと思うよ」 「嬉しい!」 予想していなかった展開に思わず彼の首に両腕を回し思い切り抱きついた。
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