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「……そんなキミこそ、僕達がずっと探してた『お姫様』だったって事にね」
夕暮れ時の魔術士(ウィザード)クラスの教室。
暖かな西日が差し込む二人きりの空間の中で、リクに詰め寄られる俺は酷く動揺していた。
……原因は、二つ。
一つは、彼の発する不穏な言葉。
そしてもう一つは、彼がおもむろに首元から取り出した特殊なロザリオ。
“一対の角と、竜の翼。そして尻尾”の意匠が凝らされた、数珠に繋がれたその銀の十字架は……。
しばらく前にジャンから聞いた、世界の裏で暗躍しているという、聖龍ブレイズが首領を務める組織。
『エンブレム』を表す証だったのだ。
「……っ!」
思わずごくりと生唾を呑み込み、表情を強張らせると、
「その反応……。やっぱり、レオンも僕達の事を知ってたみたいだね」
対照的に、リクはにこりと微笑みながらロザリオをしまって、再び饒舌(じょうぜつ)に喋り始めた。
「……まぁ、キミが『魔法局』の役人に何を吹き込まれたのかは詳しく知らないけど、あんまり僕達の事を怖がらなくても大丈夫だよ。別に、キミに何かしらの危害を加えようとか、そういう事は全く考えてないないからさ」
「…………」
安心させるように笑顔を浮かべた彼を、俺は少しの間じっと見上げてから、
「……リク。俺がお前達の探してた『お姫様』だったっていうのは、いったいどういう事だ?」
今度は、『アリシア』の演技をやめた本当の自分の言葉でリクと対峙する。
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