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スゥーと瞼があがる。
ん?誰もいない。
あたりを見渡す。本当に誰もいない。
車窓には知らない景色。
「ここどこだろ??」
わからない。
いつの間にか音楽が止まっていた。
あ、今何時だろう。
スマホを胸ポケットから取り出す。
日付:7月17日
時間:22時49分
ん!?
もう11時になる!?
お母さんに怒られる!!
と、思ったら冷や汗が出てきた。
うわぁすごい乗り過ごしだ...。やってしまった。
むー電話をかけておこうか。
ロックを解除して連絡帳から家の電話を呼び出す。
「プププププ。ガチャ。お掛けになった電話番号は現在通話中です。時間を置いてもう一度お掛け直しください」
んー通話中か。心配して他のところにかけているのかな。
お母さんのスマホのほうに掛けよう。
今度は電話帳からお母さんの電話番号を呼び出す。
「プププププ。ガチャ。お掛けになった電話番号は現在通話中です。時間を置いてもう一度お掛け直しください」
まただ。運が悪いなぁ。
今度は最近生意気な弟のソラにかけるか。
「プププププ。ガチャ。お掛けになった電話番号は現在通話中です。時間を置いてもう一度お掛け直しください」
む。ちょっとイラッとする。
こんなに掛けているのに。みんな通話中なんて。今日は通話の日か何かなのか...?
最後に残ったお父さんのスマホに掛けよう。
何度目の操作だろうか。
連絡先からお父さんを選ぶ。
「プププププ。ガチャ。お掛けになった電話番号は現在通話中です。時間を置いてもう一度お掛け直しください」
ある意味予想どおりだった。当たらないと思って買った宝くじが当たらなかった時と同じ感じだ。
「はぁ?。どうなってんだか」
独り言が漏れる。
ガタンゴトンガタンゴトン。電車の揺れる音だけが聞こえている。
もう一度だけ家に掛けよう。そう思ったときであった。
「っ...つぎ......は...き......きさ...さら......ぎ...え......き。き......さら...ぎ...えき」
ノイズ交じりに車掌のアナウンスが聞こえてきた。
駅名はなんと言っただろうか。
たぶんだけど、きさらぎ駅って言ったのかな。
わたしは頭を回転させる。
そんな駅あったっけ?
わたしの記憶の限りではそんな駅名なかったはずだ。
ガタンゴトン。その音がこだまする。
わたしは急に不安になった。
聞き慣れない駅名。見慣れない車窓の風景。繋がらない電話。
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