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そこへたまたま廊下を通り掛かった平助と左之に、斎藤は慌てて声を掛ける。
「おいっ、ちょこのふちゃり!ちょっちょ(と)」
「ん、どちたの?はじめちゃ」
「なんだ、なんだぁ。このハサミを使えばいいのかぁ?ん~……別に普通に切れるぞぉ~」
何て事ないように器用に使いこなす左之に引き続き、平助もチラシの端を切ってみるが彼もいとも簡単に切ってしまう。
結局ハサミは使う者の腕次第だという事だけはわかった。
どれだけ自分は不器用なのだろうと、斎藤は更に落ち込む羽目となる。
「ん~、よくわかんにゃいけろ頑張えお?」
「応援してんぞ~!じゃあな~!」
二人は首を傾げながらも斎藤を励まして去っていった。
知りたくなかった事実を目の当たりにして、再起不能となってしまった斎藤……。
テーブルにぺちゃりと突っ伏すと深い溜め息を吐く。
どうして自分はここまで不器用なのだろうか?
周りを見習おうにも自分以外は皆、右手を使用する為に手本とはならない。
昔から独自の使い方を習得しなければ、自身の上達の道はなかった。
せめて己にもう少しでも器用さがあれば……。
「………やはりひじゃりちぇではムイ(リ)にゃのらおうか」
「―――あん?斎藤、テメェ何してんだ」
気がつけば今度は土方が彼の目の前に立っていた。
が、彼の手には仔猫のように襟首を掴まれた近藤がぶら下がっている。
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