第1章

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 学校からの帰り道、私は彼氏と二人で帰ることになった。相変わらず優しい彼の顔を覗いて、ちょっと嬉しくなる。理由は単純、勿論彼が大好きだから。それと、いつものことではないからだ。今日はパソコン部に私と彼の二人しかいなかったからそうなっただけ。普段は部員皆で賑やかに帰る。なぜ今日は二人だけなのか。学力の低い我が部の部員たちは、ほとんどスペリングコンテストの再テストを受けているからだ。私たち以外たった一人再テストをまぬがれた子は塾だ。結果私と彼は二人きりになれたわけで、しつこいようだが私は嬉しかったのだけど、彼はどうだっただろうか――そこまで考えて、私は気が付いた。  私、今日彼と会話してない。  私がネットで漫画や小説を読んだり、SNSに投稿しているとき、普段ならよってきたり何をしているのかと聞いてくるはず。けれど今日、彼はなにもしてこなかった。それどころか私を避けようとしていたようにも思える。おかしい。絶対おかしい。急に不安に苛まれた。  普段無口だから気がつかなかっただけで、実は私を避けていたのではあるまいか。私が何か悪いことをしたのかもしれない。そういえば様子もなんだかおかしかった気がする。どうしよう。優しい彼のことだ。不満があっても言えなかったに違いない。それが積もり積もって、今の態度に現れているのだろう。普通の人にはそう変わって見えないだろうが、私は曲がりなりにも彼の彼女なのだ。些細な変化もすぐわかる。気にしすぎなら、それに越したことはないけれど。  ちらりと彼を見た。仏頂面。
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