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物の怪。妖。妖怪。
恐怖と畏怖を込めて、人間は彼らをそう呼称する。
日本の民衆信仰における人間が理解できない奇怪で異常な現象、あるいはそれを起こす存在のことを指す。
つまり、人ではない異形のもの。
古来より言伝や遺物の伝承としてその存在は伝えられてきたが、実際に存在するのかどうかは甚だ定かではない。
彼らは実在するのか。
それとも架空の存在なのか。
或る者は実在すると肯定し、或る者は実在しないと否定する。
しかし、真実はそのどちらにも傾かない。
彼らは存在しており、存在していないのだ。
それは言葉が矛盾していると指摘する者もいるだろう。
だがそれが真実に最も近い表現である。
だから無理に理解しなくてもいい。
真実なんてものは此岸、つまり現世では誰も理解できない事であるから。
しかし、人の認識の外では確かに彼らは存在している。
人が認識していないというだけで、彼らは今もなお存在し続けている。
人の理から外れた、人に認識されることのない彼岸の世になら、彼らは存在できる。
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