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鏡の前で必死に顔を背けている葉月に歩み寄る。
そして俺は厳しい口調で彼女に言った。
「葉月、こっちを向きなさい」
その声に彼女の肩がピクリと揺れる。
しかし振り向く気配が全くない彼女にもう一度呼びかけた。
「葉月」
さすがにもう無視し続けるのも無理だと観念したのだろう。
しぶしぶ振り返った彼女は真っ白なドレスに身を包んだ、フランス人形のように美しくて。
けれどその瞼には、今にも零れ落ちそうな雫が溜まっていた。
「あのな、何を不安に思ってるのか知らないが、俺は葉月だから結婚したいって思ったんだ」
「…………」
口をヘの字に曲げながら、泣かないように必死に堪えて俺を見上げる葉月に、ゆっくりと、けれど思いを込めて言葉を紡ぐ。
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