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その時、俺の背後にいた葉月が着流しの袖を掴んだ。
「うん? 葉月どうした?」
問いかけても彼女はただ、悲しそうに瞳をゆらゆらと揺らしている。
「すまないが冴子、その話はまた挙式が終わってからゆっくり話そう」
「分かったわ。まぁ貴重な歩のタキシード姿を楽しみにしてるから」
「惚れるなよ」
「はいはい」
笑い合って冴子との電話を切り、もう一度葉月に問いかける。
「葉月、どうかした?」
「どうかした?って……それは私が聞きたいんだけど」
「うん? ああ、役職の件か?」
そう尋ねた俺を葉月は怒り剥き出しの瞳で見上げた。
そして小さく笑って言葉を放つ。
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